立冬を迎えました。暦の上ではもう冬です。冬の季語でもある「さざんか」という椿の一種が咲き始める頃ともいわれていますが、何か身近なところで冬の訪れを感じることがあるのではないでしょうか。
朝晩はまた一段と冷え込み、日中もだんだんと上着が手放せない日が増えてきました。
そろそろ感染症の流行る頃ですね。うがい、手洗い、加湿、予防接種など対策法はありますが、なんといっても十分な休養と栄養豊富な食事によって、体の免疫力を高めることが大切です。免疫力を高める食事とはどんな食事なのか、季節の食材とともにご紹介します。
りんご
欧米では、昔から「一日一個のりんごは医者を遠ざける」といわれており、りんごに含まれる栄養素が注目されています。その代表的なものとして、ポリフェノールが挙げられます。りんごを切ってしばらく経つと茶色に変色しますが、これはポリフェノールのプロシアニジンによるもので、強い抗酸化作用があるといわれています。また、皮ごと食べると、皮に含まれるアントシアニンというポリフェノールも摂ることができます。体の中で活性酸素が発生すると、生活習慣病や老化を引き起こすだけではなく、免疫機能の低下にも繋がるため、ポリフェノールの詰まったりんごを食べることはウイルスに負けないからだ作りに一役買ってくれそうですね。その他、健康や美容の維持に必要とされてれるビタミンCや食物繊維も皮をむいた状態より皮つきの方が多く摂取することができます。りんごのデザートの代表である「タルトタタン」も皮つきで作られると、グラフのように栄養価が高くなることが分かります。
また、りんごを煮詰めるとジャムになるのは、水溶性食物繊維のペクチンによるもの。ペクチンも皮の部分に多く含まれています。りんごの栄養素をまるごと摂るには、皮を剥かずにジュースやジャムにしたり、すりおろしてデザートやお料理に活用したりするとよいでしょう。
美味しいりんごは、肩がしっかりと張っているものがおすすめです。
白菜
鍋物には欠かせない白菜。一昔前は寒い時期になると、どの家庭でも白菜を軒先に干して白菜漬けを作り、白菜漬けは朝食のおかずの定番であり、家庭の味を感じられるものの一つでした。白菜はクセがなく、鍋物以外にも炒め物、汁物、和え物など調理法や調味料を選ばないため、万能野菜として人気があり、近年ではオレンジ色の白菜やミニ白菜、サラダ白菜など消費者のニーズに合わせて新しい品種が開発されています。ビタミンCや食物繊維などを含んでいますが、他の野菜に比べるとそこまで多くはありません。ただ、鍋物や煮物にすると、たくさんの量を食べることのできる野菜であり、他の食材と一緒に組み合わせることで、栄養素を摂取しやすくなります。また、白菜は水分が多く、からだを冷やす野菜といわれています。昔の人が軒先で「干す」という作業をしていたのは、水分を飛ばして「冷える」作用を抑えていたという知恵は素晴らしいものですね。冷えの気になる方は、温かい料理にして食べることをおすすめします。
美味しい白菜は、ずっしりと重く、巻きがしっかりしているものを選ぶのがおすすめです。
大根
おろしやサラダ、和え物に、おでんや煮物、汁物に、切り干し大根、沢庵に…いろんな姿に形を変える大根です。一年中出回ってはいますが、やはり今の時期の大根は水分が豊富で、柔らかく、辛味も弱いので、煮物にするには最適です。おでんやふろふき大根にすると、中まで煮汁が染み込み、食べるだけで体が温まります。大根の肉詰めは、肉の旨みが大根にしみて美味しくなると共に、肉のタンパク質を代謝するために必要なビタミンB6も一緒に摂取ができる組み合わせとなります。
また、大根にはジアスターゼ(でんぷん分解酵素)、プロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)、リパーゼ(脂肪分解酵素)などの酵素が多く含まれています。酵素は熱に弱く、50℃前後の加熱で壊れてしまうので、生のまま食べられる大根おろしは酵素を摂るには効果的です。揚げ物や焼き魚、焼き肉などの脂っこい料理に大根おろしを添えて食べたくなることがありませんか?これらの料理に大根おろしを添えるとさっぱり食べられるだけではなく、酵素が消化を助けてくれるので、とても理にかなった食べ方になっています。
大根の葉は根の部分よりも栄養価が高く、鉄やカルシウム、βカロテンやビタミンCが豊富に含まれています。葉付き大根の出回るこの時期は葉も和え物や炒め物など青菜と同様に調理をして食べるとよいでしょう。
ねぎ
おばあちゃんの知恵袋として、「風邪を引いた時は、ねぎを首に巻くとよい」ということが昔からいわれてきました。その真否は定かではありませんが、ねぎの辛味成分である硫化アリルには殺菌作用があり、揮発した硫化アリルが鼻や喉の粘膜に付着して、風邪の菌を殺菌してくれると考えられていたようです。またその辛味成分には、交感神経を刺激して、体を温める働きもあります。体の中の酵素は37℃前後で最もよく働き、37℃前後の体温で病原菌は死滅するといわれています。免疫力を高めるにはねぎや生姜、根菜など体を温める食材を積極的に取り入れるとよいでしょう。
調理のポイントは「焼く」。ねぎは生の状態と比べて甘みが増し、活性酸素を消す力である抗酸化力は、2.5倍も高くなります。体調が悪く食欲がない時は、焼いたねぎを添えた熱々の「うどん」はおすすめです。
ねぎは横に寝かせて保存をすると、余分なエネルギーを使って起き上がろうとして曲がったねぎになってしまい味も落ちてしまいます。冷蔵庫で保存をする時は、1/3~1/2の長さに切って、ラップにくるんで立てて保存をするとよいでしょう。
牡蠣
立冬の頃、生食用のマガキは旬を迎えます。立春を迎える頃にはノロウイルスの危険性が高まり、生食用から加熱用に切り替わるため、生食用のマガキが食べられるのは今だけです。牡蠣は「海のミルク」ともいわれますが、これは牡蠣が牛乳のような乳白色をしているからだけではなく、「完全栄養食品」とも呼ばれる牛乳同様に、豊富な栄養素が含まれているためです。中でも、牡蠣にはミネラルが豊富で、亜鉛を多く含む食品の代表格です。亜鉛は体内の免疫機能に関与し、侵入してきた細菌やウイルスを防御する働きがあるため、今の時期に摂りたい栄養素の一つです。不足しがちな鉄、カルシウム、マグネシウムなども多く含まれています。生食用と書かれている新鮮な牡蠣でなければ、しっかりと火を通すことが鉄則です。85℃で1分以上の加熱をしましょう。
牡蠣にはレモンをかけて食べることがよくありますが、これは美味しく食べられるだけではなく、レモンのビタミンCを一緒に摂ることで、牡蠣に含まれる鉄の吸収がよくなります。さらに衣にパセリのみじん切りを加えることで、彩りが鮮やかになると共に、ビタミンCの量も25%アップします。
(文/写真 デザイナーフーズ株式会社)